お腹が張るとお悩みの方
「お腹が張ってつらい」と感じたことがある方は多いのではないでしょうか。お腹の張りは、食べ物やガスが消化管内にたまって膨らむことで起こる症状で、原因はさまざまです。大きく分けると、お腹の張りには2つのタイプがあります。
1つは腹部膨満感と呼ばれるもので、腸の機能的または器質的な異常によりガスがたまり、膨張感や痛みを感じるタイプです。もう1つは胃部膨満感で、胃や十二指腸の働きに問題があると、食べたものの消化がうまく進まず、胃が張ったように感じます。単なる食べすぎや飲みすぎによる一時的な張りであれば、しばらく様子を見ても問題ないことが多いですが、慢性的に続く場合は注意が必要です。お腹の張りが、胃腸の病気の初期症状として現れている可能性もあるため、違和感が続く場合は早めにご相談ください。
また、妊娠中にもお腹の張りを感じることがありますが、必ずしも妊娠だけが原因とは限りません。妊娠中であっても気になる張りや違和感がある場合は、担当の医師に相談して適切な判断を受けるようにしましょう。
お腹が張る原因
お腹に溜まったガスが原因
通常、腸内で食べ物が消化される際に発生するガスは、腸壁から吸収されて呼気や皮膚から排出されたり、一部がおならとして体外に出ていきます。しかし、腸内環境が乱れると、腐敗ガスなどの悪臭を伴うガスが大量に発生することがあります。また、ストレスなどによって自律神経のバランスが崩れると、腸の動きが悪くなり、ガスの排出がうまくいかず、腸にガスが過剰にたまる鼓腸(こちょう)という状態になることもあります。このような状態になると、お腹の張りや不快感を強く感じるようになります。
病気が原因
たとえば、食道・胃・十二指腸など上部消化管の異常では、胃のあたりに張りを感じる「胃部膨満感」が、また小腸や大腸の疾患では「腹部膨満感」として現れます。さらに、消化管以外の消化器疾患や、がんが進行して食べ物やガスの通り道がふさがれると、膨満感が強く現れることがあります。こうした膨満感は、がんの早期発見の手がかりとなる重要なサインのひとつでもあります。お腹の張りが長く続く、痛みを伴う、食欲不振などの症状が併発している場合は、早めにご相談ください。
お腹が張る主な病気
- 便秘
- 過敏性腸症候群
- 呑気症
- 逆流性食道炎
- 機能性ディスペプシア
- 急性胃腸炎
- 腸閉塞
- 腹部の腫瘍(大腸がん、胃がん、膵臓がんなどの腫瘍)
など
女性特有の原因
女性は、ホルモンバランスの変化や骨盤内の構造、便秘のしやすさなどから、男性よりもお腹の張りを感じやすい傾向があります。特に、月経周期に伴う女性ホルモンの変動は、自律神経や腸の動きにも影響を及ぼし、腹部の膨満感を引き起こしやすくなります。また、女性特有の臓器である子宮や卵巣の位置関係によって腸が圧迫され、ガスがたまりやすくなることも要因のひとつです。しかし、こうした一時的なものだけでなく、子宮筋腫や卵巣のう腫などの婦人科疾患、あるいは消化器の病気が関係している場合もあります。特に症状が長引いたり、他の不調(痛み、不正出血、便通異常など)を伴う場合は、軽視せず、ご相談ください。
妊娠の初期症状
腹部膨満感があって、しばらく生理が無い、少量の不正出血があった(着床出血)、眠気、倦怠感などが続くといった場合、妊娠初期の可能性があります。
生理前のPMS症状
排卵日以降、生理の直前までは女性ホルモンのうちプロゲステロン(黄体ホルモン)が優位になる時期です。プロゲステロンは消化管の蠕動運動を抑える働きがあり、膨満感があらわれやすくなります。
更年期などによる胃腸機能の低下
閉経前の5年ほどは、女性ホルモンの分泌が大きくゆらぎながら低下していくことで、自律神経のバランスが乱れ、腸の動きが低下して便秘やガスのたまりやすかったり、内細菌のバランスも崩しやすくガスの発生量が増えたりするため、膨満感が起こりやすくなります。
お腹の張りを改善する方法
ゆっくり食べる習慣をつける
食事のときに早食いをすると、空気を一緒に飲み込みやすくなり、それがガスとなってお腹の張りにつながります。よく噛んで、ゆっくりと時間をかけて食べることで、空気の飲み込みを減らすことができます。
食べすぎ・飲みすぎを控える
大食いをすると、胃腸が処理しきれず、食べ物やガスがたまりやすくなります。特に脂っこい食事や炭酸飲料のとりすぎには注意が必要です。また、水分もこまめに少しずつ摂るように意識しましょう。
食物繊維を含む食べ物をバランスよく摂る
野菜、果物、海藻、豆類などに含まれる食物繊維は、腸内環境を整えるのに役立ちます。ただし、摂りすぎると逆にガスを増やしてしまうため注意が必要です。
適度な運動を取り入れる
身体を動かす習慣をつけることで、腸の働きが改善され、膨満感を解消できることがあります。ウォーキングなどの有酸素運動、スクワットなどのレジスタンス運動を、無理せず続けられる程度で行いましょう。
ストレスケアする
ストレスによって自律神経が乱れると、胃腸の活動が低下したり、亢進し過ぎたりして、膨満感があらわれることがあります。趣味や散歩など自分なりのストレス解消法をみつけましょう。
冷たいものより温かい飲み物をとる
冷たい飲み物により、胃腸を冷やしてしまい働きを弱めてしまうことがあります。常温の水や温かいお茶など選ぶことがおすすめです。
胃腸薬の使用にも注意する
市販の胃腸薬で一時的に症状がやわらぐこともありますが、自己判断で長く飲み続けることで、重篤な病気の発見を遅らせてしまうことがあります。症状が続く場合は、当院までご相談ください。