機能性ディスペプシア（FD）について
胃痛、早期飽満感（食べ始めるとすぐお腹がいっぱいになってしまう）、胸やけ、ゲップ、胃もたれといった不快な症状が続いていて、胃カメラ検査などを行っても、食道、胃、十二指腸などに目で見て分かるような（器質的な）病変が見つからないという特徴があるのが機能性ディスペプシアです。英語のFunctional Dyspepsiaの頭文字をとってFDと呼ばれることもあります。昔は神経性胃炎と診断されることが多く、また自律神経失調症とされることもあったのですが、近年の研究で、胃の運動機能や知覚機能に障害が起こってこのような症状があらわれていることが分かってきて、適切な治療を受けられるようになりました。機能性ディスペプシアは、食後に不快感があらわれるタイプ（食後愁訴）と、みぞおちに不快感があらわれるタイプ（心窩部症状）に分かれており、それぞれのタイプと患者様の状態で治療法が異なってきます。
当院では、日本消化器病学会専門医がこうした要素を丁寧に診断し、対応しておりますので、胃の不快感が続いているなどのお悩みがありましたら、いつでもご相談ください。
機能性ディスペプシア（FD）の症状
次のような症状が、数カ月単位で続くのが特徴です。
- 胃がもたれる
- 胃が重い
- 胃やみぞおちにいつも不快感がある
- 胸やけがある
- 少し食べただけで満腹になってしまう
- げっぷが増えた
- 吐き気、嘔吐
- 食欲がわかない
など
機能性ディスペプシア（FD）の原因
原因は一つではなく、いくつかの要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。特に「ストレス」は、重要な要因の一つです。
ストレスによる自律神経の乱れ
消化器の働きは自律神経によって調整されています。強いストレスや精神的な緊張が続くと、自律神経のバランスが崩れ、胃腸の動きが鈍くなったり、逆に過敏になったりすることがあります。このような自律神経の乱れは、機能性ディスペプシアの症状を引き起こす大きな要因となります。
胃の動きの低下
消化管は、蠕動運動と呼ばれる筋肉の収縮によって、食べ物を常に肛門方向へ送り出す働きをしています。胃もまたこの蠕動運動の一部として、消化や内容物の移動に重要な役割を果たしています。この動きが弱まると、胃の中に内容物が長く留まってしまい、胃の不快感、もたれ、吐き気、早期満腹感などの症状があらわれやすくなります。
胃の知覚過敏
機能性ディスペプシアの方では、胃の内部からの刺激に対して過敏に反応する「知覚過敏」が起こっている場合があります。通常であれば感じない程度の胃の膨らみや内容物の動きでも、痛みや不快感として感じてしまうのです。これが、胃もたれや胸やけ、早期満腹感など、様々な症状の原因となります。
機能性ディスペプシア（FD）の診断・検査
2016年にローマ部会が策定したRome IV分類が日本の消化器学会でも診断基準として採用されており、当院でもこの基準に従った上で、機能性ディスペプシアが疑われる場合、胃カメラ検査によって食道、胃、十二指腸に目に見えるような器質的病変が無いことを確認して確定診断を行い、適切な治療につなげています。
当院では、日本消化器病学会専門医・日本消化器内視鏡学会専門医の院長が、最新のシステムを駆使して、患者様の負担の最小限にするため、様々な工夫をこらして、胃カメラ検査を実施しております。胃痛や早期飽満感（食べ始めるとすぐお腹がいっぱいになってしまう）、胸やけ、ゲップ、胃もたれといった症状が続いている方は、一度ご相談ください。
機能性ディスペプシア（FD）の治療
機能性ディスペプシアの治療では、まず生活習慣の見直しが基本となります。食事や睡眠といった日常のリズムを整えることに加えて、ストレスの軽減も重要です。その上で、症状に応じた薬物療法を組み合わせて行います。
生活習慣・食習慣の改善
生活リズムが乱れると、自律神経のバランスが崩れやすくなり、胃腸の働きにも影響を及ぼします。特に、日光は体内時計を調整する重要な役割があり、「早寝・早起き」を心がけることが大切です。生活リズムが整ってくると、朝・昼・夕、決まった時間に食事を摂る習慣もつきやすくなり、自然に腸の調子も改善していく傾向があります。当院では、患者様お一人おひとりに合わせた生活習慣の改善のアドバイスをしております。
薬物療法
当院では、患者さまの体調や生活背景を丁寧に伺いながら、薬剤を選択していきます。たとえば、食後の不快感や胃もたれなどには、胃の運動を促進または調整する薬（消化管運動機能改善薬）、心窩部の痛みや違和感が強い場合は、知覚過敏の関与が考えられるため、胃酸の分泌を抑える薬（胃酸分泌抑制薬）が選択されます。