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脂肪肝

脂肪肝について

脂肪肝について糖質や脂質を摂り過ぎて肝臓に溜まった中性脂肪(トリグリセライド)が、肝臓の細胞の3割を超えた状態が「脂肪肝」と定義されています。肝臓に脂肪がたまっているかどうかは、腹部超音波検査などの画像検査の他、血液検査のAST(GOT)やALT(GPT)、γ-GTPの数値を確認することでわかります。
脂肪肝の状態になると、脂肪が肝臓内でエネルギーとして燃やされる際に、細胞が傷ついて炎症を起こす「脂肪肝炎」を起こすリスクが高まり、肝硬変や肝がんに移行するリスクも同時に高まっていきます。
近年、食生活の変化から脂肪肝と指摘されている人の数は増加しており、健康診断を受診した人の2~3割が脂肪肝を指摘されています。20~50歳代では男性に多く、50歳代後半以降の男女比は同じ程度になります。

脂肪肝は無症状のこともありますが、肝臓の炎症を示す数値の上昇や肝臓の細胞の繊維化を認めるようになると、「脂肪性肝疾患」となります。

脂肪性肝疾患は大きく分けて、

原因 病名
アルコールに関連 アルコール関連肝疾患(ALD)
代謝機能障害アルコール関連肝疾患(MetALD)
アルコールに関連しない
(非アルコール性)
代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)
代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)

と分類できます。

アルコールに関連する脂肪性肝疾患の場合は、禁酒による治療効果が高いのですが、非アルコール性の場合、進行して脂肪性肝炎を起こしているケースでは肝硬変や肝がんへの移行リスクが高いため特に注意が必要です。
なお、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)や代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)は、これまで非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)という病名で呼ばれていましたが、NAFLDのFがfatty(肥満)をあらわしており、これが差別意識に結びつきやすいことから、国際的な肝臓学会が2023年に共同で病名変更を提案し、日本消化器病学会もこれに従って日本語病名を検討した結果、2024年8月から標準病名が変更になりました。

脂肪肝の症状

脂肪肝の症状脂肪肝というだけでは、まず自覚症状がありません。健康診断で肝臓関連の数値の異常を指摘されたり、別の病気の検査で腹部超音波検査を受けて発見されたりするケースが多いのが実情です。
ただし、糖尿病、高血圧症、脂質異常症(高脂血状態)といった生活習慣病との関連が高いため、これらの病気がある方は脂肪肝の可能性が高くなります。また、肥満との関連も高く、中年になって10kg以上体重が増えたり、急激に体重が増加したりといった方、または内臓脂肪型肥満を指摘された方は注意が必要です。

脂肪肝の原因

アルコール性の場合

アルコールを肝臓で代謝する時に中性脂肪が合成されることなどで、肝臓の脂肪が過剰となっていくことがわかっています。

非アルコール性の場合

非アルコール性の脂肪肝暴飲暴食、特に糖質や脂質を摂り過ぎた場合に脂肪肝のリスクが高くなります。特に、「自分は脂質を控えているのに、どうして脂肪肝に?」と思われる方も多いのですが、糖質が原因となって中性脂肪が増え、脂肪肝になってしまうことも多いため注意が必要です。糖質は細胞が働くためのエネルギーとして必須のものですが、必要とするエネルギーより摂取する量が多すぎると、その分は中性脂肪となって肝臓や筋肉、内臓の周囲に蓄積され、これが脂肪肝の原因となります。糖質の摂り過ぎは、脂肪肝の他に、肥満、内臓脂肪型肥満につながり、さらに2型糖尿病の原因ともなります。すべてがつながって、メタボリックシンドロームとなりますので、適切にコントロールしていくことが大切です。

脂肪肝の診断・検査

血液検査の肝機能をあらわす項目のうち、ASTやALT、γ-GTPの値が、正常値を超えた時、脂肪肝を疑います。

肝細胞が壊れた時に血液中に漏出する酵素

  • AST(GOT)正常値:10~40U/L
  • ALT(GPT)正常値:5~40U/L

肝細胞に障害がある時や胆汁の流れが悪い時に血液中に漏出する酵素

  • γ-GTP 正常値:
    男性70、女性30U/L以下

脂肪肝の治療

脂肪肝と分かった場合、主に体重コントロール、食事制限、運動療法などの生活習慣の改善をしていきます。

食事療法

  • 禁酒または飲酒を控える
    目安はビール(中瓶)500mL、缶酎ハイ350mL、日本酒1合まで
  • 脂質、糖質の多い食材を控える
  • たんぱく質、脂質、炭水化物をバランス良く配した食事とし、ミネラル、ビタミン類、食物繊維もしっかり摂る
  • 就寝時間の3時間前以降は夕食、夜食などを摂らない
  • おやつや小腹が空いた時などの間食を控える
    (妊娠中の方、早期飽満感のある方、胃の手術をした方などは、間食ではなく3食分を5食で食べるなど工夫が必要です。ご相談ください。)

運動療法

  • 激しい運動ではなく、ウォーキングなどの有酸素運動を1日30分程度行う習慣を付ける(スクワットなどのレジスタンス運動を追加するとさらに効果あり)
  • 毎日は無理でも、最低でも週3回以上行う習慣をつける(とにかく続けることが大切です)

薬物療法

脂肪肝そのものの治療には、現在健康保険の適用薬はありません。生活指導を中心に治療を行いますが、合併症がある場合はそれにあわせた薬物を処方し、合併症が無い場合にはビタミンEの投与が現在のところ第1選択となっています。