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感染性腸炎

感染性腸炎について

感染性腸炎とは、ウイルス、細菌、寄生虫、真菌といった病原体が腸に感染して炎症を起こすことによって、吐き気や嘔吐、下痢、腹痛といった消化器症状をおこすものです。主に小腸・大腸の症状があらわれる場合を腸炎、胃腸症状があらわれる場合は胃腸炎と言うこともあります。ウイルス感染は冬場に多く、細菌感染は夏場に多い傾向があります。これら病原体のいる食物を食べることや汚染された物質に触れた手で調理をしたりすることで感染します。

感染性腸炎の症状

感染性腸炎の症状潜伏期間は原因となる病原体によって違いますが、平均的には24時間から72時間程度です。症状も原因によって異なりますが、多いのは吐き気・嘔吐、下痢、腹痛といった胃腸症状に発熱などの全身症状が加わるケースもあります。下痢や嘔吐がひどい場合には、脱水症状があらわれ、適切に治療しないと生命にかかわることもあります。症状が続く期間も原因によって異なりますが、平均的には1~2日で治まっていきます。ただし、抵抗力が弱い方は長引くこともあります。

感染性腸炎の原因

感染の原因病原体としては、ノロウイルスやロタウイルスなどのウイルス、腸炎ビブリオや病原性大腸菌類などの細菌、アメーバ等の寄生虫などのほか、真菌類による場合もあります。

ウイルスの特徴

ノロウイルス

ノロウイルスは、感染性腸炎ではもっともポピュラーな病原体です。経口感染で汚染された二枚貝、汚染された水、感染者からの飛沫などで感染が広がります。主な症状は嘔吐、下痢、腹痛などです。成人の場合、一般的に軽症なため1~3日で回復します。しかし、免疫力の低いお子様や高齢者の方、基礎疾患のある方などは重症化する可能性があるため、注意が必要です。

ロタウイルス

ロタウイルスも非常にポピュラーなウイルスで、日本では5歳ぐらいまでにほとんどの子どもがウイルスに感染していると言われており、幼児が下痢を起こした場合、多くはロタウイルス感染症です。乳幼児が最初に感染した場合、重症化しやすいため、2020年10月1日より、ロタウイルスワクチンの定期接種が開始になりました。大人は抵抗力が備わっており、ロタウイルスに感染してもほとんど無症状で終わります。

感染性腸炎の診断・検査

一般的には、問診などで症状や経緯を詳しくお聞きして診断することになります。抗原検査もありますが、ノロウイルスの場合は擬陽性の可能性が有り、必要な場合だけ検査します。検査は3歳未満の乳幼児または65歳以上の高齢者には健康保険が適用されます。

感染性腸炎の治療

ウイルス感染の場合は、抗ウイルス薬が無いため、対症療法を行います。細菌感染の場合は抗菌薬の投与が有効です。対症療法としては、嘔吐や下痢への対応、腹痛への対応、解熱鎮痛などを症状に合わせて投与しますが、無理に下痢や嘔吐を止めることでかえって病原体を身体から排除することが遅くなってしまうこともあり、慎重に検討した上での対症療法となります。基本的には、下痢止めではなく、整腸剤を使用します。また、嘔吐や下痢で脱水を起こさないために、適切な水分補給を心がけますが、脱水症状があらわれている場合は、点滴による補水なども検討します。

感染性胃腸炎の予防

手洗い

手洗いノロウイルスやロタウイルスは、アルコール消毒の効果がほとんど期待できません。そのため、手洗いが非常に重要です。調理の前はもちろん、肉や卵などの食材に触れた後は手洗いのみならず、包丁やまな板もしっかり洗うようにしましょう。また、トイレの後や食事の前などは調理に携わらない方もしっかり手洗いする必要があります。

二枚貝の調理

牡蠣に代表される二枚貝はノロウイルスに汚染されやすい傾向があります。牡蠣の生食で当たった場合、ほとんどの原因がノロウイルスです。生食用に消毒されたもの以外は、必ず中心部が85~90℃以上になるようしっかりと加熱した上で食べるようにしましょう。

感染した方が
身の回りにいる場合

便や吐物の処理

便や吐物の処理吐物などの後始末は、必ず使い捨てのビニール手袋、マスクの他、エプロンも着用し、大きめの雑巾やキッチンタオルなど使い捨てできるものを使用します。塩素系消毒液(次亜塩素酸ナトリウムを希釈した消毒液)で拭き取り、拭き取ったものはポリ袋に密封して廃棄します。ウイルスが飛沫などで残留していると、渇いてから室内に広がる可能性もあるため、清掃後は必ず換気してください。

便や吐物が付着した
衣類・シーツの消毒、洗濯

  • 衣類やシーツ等の後始末も、できる限り使い捨てのマスク、ビニール手袋、エプロン、またはすぐに洗うことのできるジャージ類などを着用し、二次感染しないように注意してください。
  • 大きめのポリ袋を用意し、汚物のついたものを入れ、移動の際に飛沫などをばらまかないように密閉してください。
  • 付着した汚物は、シャワーやバケツなどで良く洗い流した後、「0.02%に希釈した次亜塩素酸ナトリウムの消毒液」に30分~1時間程度浸す、または85℃で1分以上熱湯消毒します。もし汚れが落ちにくい場合は、より濃度の高い「0.1%に希釈した次亜塩素酸ナトリウムの消毒液」で消毒してください。※次亜塩素酸ナトリウム溶液に浸した衣類・シーツ類は色落ちや生地の傷みなどが生じることがありますので、ご注意ください。
  • 消毒が済んだら、他の衣類とは完全に分けて、一番後に洗濯機で洗ってください。

感染性胃腸炎にまつわる質問

感染性胃腸炎と診断されましたが、食べ物や飲み物で何か気をつけることがありますか?

症状の激しい時は、身体が頑張って病原体と闘っている時期です。この時期に無理矢理食事を摂ろうとすると、腸が休めずかえって回復を遅らせてしまうことがあります。腹痛が続いている間は、無理して食べないことが大切です。ただし、下痢や嘔吐があると、身体から水分が大量に出てしまうため、脱水やミネラルバランスが崩れた状態になっており、経口補水液(OS-1など)やスポーツドリンクを用意して補給する必要があります。

1日1L~1.5L程度を1度に少量ずつ何度にもわけて飲むようにしましょう。また、冷たいものを飲むと、お腹が冷えてしまいますので、常温にして飲むようにしましょう。それでも、水分を飲んだら吐いたり、下痢したりしてしまう場合は、点滴を行いますので、当院までご相談ください。

家族が感染性胃腸炎と診断されました。嘔吐や下痢がありますが何に気をつけたら良いでしょうか?

2次感染を防ぐために、以下のことに注意してください。

  • 汚物を始末する際は、直接汚物に触れることが無いよう、できる限り使い捨てのビニール手袋、マスクを着用して行う。
  • 汚物を処理した後は、必ず丁寧に手指を洗う。ノロウイルスなどはアルコール消毒が効かないため、石けんをしっかり泡立てて、指の股や爪の先まで洗い残しが無いようにする。
  • それでも手洗いが不十分だった時のことを考慮し、家族でタオルの使い回しは避けて、専用のタオルを使用する。
  • 感染者が触れた便座やトイレのドアノブなど塩素系の消毒薬でしっかり拭く。
  • トイレ以外の場所での嘔吐した場合は、できる限り使い捨てビニール手袋とマスクで防御し、使い捨てできる雑巾やキッチンタオルなどで吐物を拭き取り、大きめの袋に入れ密封して廃棄する。トイレに流せる場合は流しても良いが、飛沫に注意する。拭き取った後は塩素系の消毒薬でしっかりと消毒し、部屋を換気する。
  • トイレで排便、または嘔吐をした場合、病原体の飛散を防ぐため、必ず便座の蓋を閉じて水を流す。蓋を閉めても多少は飛沫が飛ぶため、床や便器などを塩素系消毒薬で消毒する。

塩素系消毒薬の作り方を教えてください。パーセントの計算が難しいです…。

吐物は胃酸が混じっているため、強い酸性になっており、塩素系漂白剤をそのまま原液でかけると有毒ガスが発生するおそれがあり危険です。必ず希釈液を作って使用してください。


事前準備

  • 次亜塩素酸ナトリウムが肌につかないよう、使い捨てのビニール手袋を使用する
  • 家庭用塩素系漂白剤(ハイター、ブリーチなど)と2Lの容器、(空きペットボトルなど蓋できるもの)を用意し、2Lのところに線を引いておく

※空きペットボトルなどを使う場合は、誤飲を防ぐために大きく目立つよう「塩素系消毒薬・飲用禁止!」などと予め書いておく


主に吐物や便が付着したものに使用する場合

0.1%次亜塩素酸ナトリウム消毒液の作り方
  1. 漂白剤を2Lの容器に入れる(ペットボトルのキャップで8杯分:40ml)
  2. 容器に合わせて2Lになるまで水を加える
  3. 容器のキャップをしっかり閉めてから、よく振って混ぜる

床や洋服、ドアノブなど家のなかの消毒に使用する場合

0.02%次亜塩素酸ナトリウム消毒液の作り方
  1. 漂白剤を2Lの容器に入れる(ペットボトルのキャップで2杯分:10ml)
  2. 容器に合わせて2Lになるまで水を加える
  3. 容器のキャップをしっかり閉めてから、よく振って混ぜる

次亜塩素酸ナトリウムを使用する上での注意点

  • 使用の際は、窓を開ける、換気扇を回すなどしっかり換気する
  • 酸素系の漂白剤や洗剤、お酢などと混ぜ合わせると、塩素ガスが発生して危険なため、単独で使用する
  • 作った消毒液は、時間が経つと効果が無くなってしまいますので、必要な分だけ作るようにして、長期間保存しないようにする